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福岡地方裁判所 昭和40年(行ウ)10号 判決 1965年11月26日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告は別紙目録記載の土地についてなした福岡法務局西新出張所昭和四〇年一月二五日受付第一六六八号所有権保存登記を取り消し、これを抹消せよ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、請求原因を次のとおり述べた。

「一、原告は別紙目録記載の土地(以下本件土地という。)を所有している。

二、本件土地はもと訴外亡国友亮太郎の所有に属していたが、明治一一年六月一五日同人の長男訴外亡国友権蔵が家督相続によりその所有権を取得し、明治四〇年六月四日原告先代亡松隈和之が売買によりその所有権を取得し、同人が昭和三七年一〇月一二日死亡したので、原告、訴外松隈和夫および古海小春が共同相続人としてその所有権を承継したのち、遺産分割の協議の結果原告が単独所有することとなつた。

三、一方前記訴外亡国友権蔵は昭和一六年四月三〇日死亡し、同人の養女長谷部円子(婚姻による改性前は国友)が家督相続したが、同女は昭和一八年六月四日隠居したので、指定相続人として同人の叔母である訴外国友アキが家督相続した。

四、原告は右訴外国友アキを被告として昭和三九年一一月三〇日福岡簡易裁判所に本件土地につき所有権確認の訴を提起し、同四〇年三月九日原告勝訴の判決を受け、同判決は同月二四日確定した。

五、しかるに、被告は福岡法務局西新出張所昭和四〇年一月二五日受付第一六六八号で本件土地につき訴外長谷部円子のために所有権保存の登記をした。

六、元来、本件土地の所有者でなく、したがつて始めてする所有権の登記を申請することができない右訴外長谷部円子のなした右所有権保存登記の申請は却下さるべきであつたのに、被告はこれを受理し、前記登記をなしたものであるから、これを取り消し、抹消すべきである。

七、そこで、原告は昭和四〇年三月九日訴外福岡法務局長に対し、被告の右処分につき審査請求をなしたところ、隠居者の留保財産についての所有権の保存登記請求がなされたものと認定して処理するのが相当である旨の理由により同年四月二一日請求棄却の裁決があり、原告は同月三〇日右裁決書を受け取つた。

八、よつて、原告は被告に対し、本件土地につき福岡法務局西新出張所昭和四〇年一月二五日受付第一六六八号保存登記を取り消し、これを抹消することを求めるため本訴に及んだ。」

被告指定代理人は「主文同旨」の判決を求め、答弁として次のように述べた。

「本件土地がもと訴外亡国友亮太郎の所有であり、明治一一年六月一五日同人の長男訴外亡国友権蔵が家督相続によりその所有権を取得したこと、本件土地について、原告が訴外国友アキを被告として福岡簡易裁判所に所有権確認の訴を提起し、原告主張の日原告が勝訴の判決を受けたこと、被告が本件土地について原告主張の所有権保存登記をしたこと、原告が原告主張の日訴外福岡法務局長に対し、被告の右処分につき審査請求をなしたところ、原告主張の理由により、原告主張の日請求棄却の裁決があり、原告がその主張の日右裁決書を受け取つたことはいずれも認めるが、その余の事実は知らない。前記訴外長谷部円子が前示所有権保存登記の適法な申請人ではなく、したがって、同人のなした右登記申請は、却下さるべきであつたので、被告は右登記を取り消し、抹消すべきであるとの原告の主張は争う。」

証拠(省略)

別紙 目録

福岡市大字片江字長の町一五二一番地

一、山林八畝歩

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